設計一般

エンジンのトルク・回転数・出力の関係とNA・ターボ・ダウンサイジングの違い

ichimatsu

トルク・回転数・出力の関係

エンジンの性能は「トルク」「回転数」「出力」という3つの指標で表されます。この3つは独立した数値ではありません。出力はトルクと回転数の掛け算で決まります。まずこの関係を押さえた上で、NA・出力型ターボ・ダウンサイジングターボという3タイプの違いを見ていきます。

トルク:車を押し出す回転力

トルクは、エンジンがクランクシャフトを回転させる力そのものです。発進時の押し出す力や坂道での粘り、加速の力感に直結します。単位は「N・m」または「kgf・m」です。自転車のペダルを踏み込む力に例えると分かりやすく、力が強いほど瞬発力や牽引力が高まります。

回転数(RPM)の意味

回転数はエンジンが1分間に何回転するかを示す数値です。ピストンが上下しクランクシャフトが回転する速さを表します。回転数が高いほど、燃焼サイクルが短時間で多く行われます。これがそのままエンジンの仕事量、つまり出力に直結するのです。

出力(馬力・kW)と「出力=トルク×回転数」

出力は単位時間あたりにエンジンがどれだけ仕事をできるかを示す指標です。トルクと回転数を掛け合わせたもので、「PS」や「kW」で表示されます。式にすると次の通りです。

出力(kW) = 2π × トルク(N・m) × 回転数(rpm) / 60 / 1000

トルクが高いほど、また回転数を上げるほど出力は大きくなります。トルクは瞬間的な「力」そのもの、出力はその力を単位時間あたりどれだけ継続して発揮できるかという「仕事量」です。NA・出力型ターボ・ダウンサイジングターボの違いは、このトルクと回転数のバランスの取り方の違いに集約されます。

最高出力の回転数は、最大トルクの回転数より高い

最大出力が発生する回転数は、最大トルクが発生する回転数よりも高くなります。これは出力の式そのものから説明できます。トルクが最大値から多少下がっても、回転数がそれ以上のペースで伸びていれば出力はまだ増え続けるからです。トルクの山を回転数が追い越すところまで、出力は伸び続けるのです。

だから性能曲線には最大トルク発生回転数と最大出力発生回転数の2つが載っています。最大トルク発生回転数が低いエンジンは日常域での扱いやすさに優れます。最大出力発生回転数が高いエンジンは高速域やサーキットでの伸びに優れる傾向があります。カタログの馬力の数字だけでは、この「使いどころ」までは分からないのです。

エンジン性能曲線の読み方:トルクカーブと出力カーブの関係(最大出力は最大トルクより高回転側に出る)

エンジンの基本性能指標

指標 単位 意味 関係性
トルク N・m(kgf・m) 車を押し出す力 出力=トルク×回転数
回転数 rpm エンジンの回転速度 出力=トルク×回転数
出力 kW(PS) 単位時間あたりの仕事量 出力=トルク×回転数

NA・出力型ターボ・ダウンサイジングターボの違い

過給の有無と設計思想によって、トルクカーブの形はまったく違うものになります。3タイプを順に見ます。

NA・出力型ターボ・ダウンサイジングターボのトルクカーブ比較(模式図)

NA(自然吸気)エンジンとは

NA(Naturally Aspirated)エンジンは、ターボチャージャーなどの過給器を装着せず、大気圧の力だけで空気を吸い込むエンジンです。部品点数が少なく構造がシンプルです。

最大の特徴はアクセル操作に対するリニアな応答です。過給器を介さないため、踏み込んだ量に応じて回転上昇がダイレクトに返ってきます。一方で過給による空気密度の向上という恩恵は受けられません。同じ出力を狙うには排気量を大きくする必要があり、燃費や環境性能ではターボに分が悪くなります。高地では吸入空気量が減るため、出力が下がりやすい点もデメリットです。

出力型ターボエンジンとは

昭和から平成初期のターボエンジンは、燃費よりも最大出力を優先する設計思想でした。アクセルを踏んでから過給が立ち上がるまでの時間差、いわゆるターボラグが大きく、過給が始まると急激にパワーが立ち上がる特性を持っていました。

当時は圧縮比を上げるとノッキングを起こしやすく、これを避けるために圧縮比を低めに設定していました。その結果、低回転域のトルクが薄く、実用域での扱いやすさより高回転域でのパワーを優先した設計になっていたのです。

ダウンサイジングターボエンジンとは

現在主流のダウンサイジングターボは、排気量や気筒数を減らして燃費を稼ぎます。そして不足したパワーをターボで補うという設計思想です。従来のターボが「パワーの上乗せ」を狙ったのに対し、こちらは「小型化で失った分の穴埋め」が目的なのです。

直噴システム、可変バルブタイミング、ツインスクロールターボといった技術を組み合わせ、最大トルク発生回転数を1000〜1500rpm前後まで下げています。こうして低回転からの厚いトルクとターボラグの少なさを両立させているのです。これにより日常域での扱いやすさと燃費を両立していますが、トルクカーブが平坦になる分、NAエンジンや出力型ターボが持っていた回転域ごとの性格の違いは薄れる傾向にあります。

均質化は効率を上げます。同時に、それまで腕で埋めていた差を見えなくします。設計の仕事で同じことが起きる話は型を守るほど、見えていた仕事が消えるに書きました。

機械設計者の視点:減速機はトルクを増やすが、出力は増やせない

出力=トルク×回転数の式は、エンジン選びだけでなく動力伝達系の設計全般で効いてきます。押さえておきたいのは、減速機(歯車)はトルクを増やせるが、出力は増やせないという点です。

減速比2の歯車対で回転数を半分にすると、トルクは伝達損失を無視すれば2倍になります。掛け算の結果である出力は変わりません。動力源の出力こそが単位時間にできる仕事の上限です。減速比はトルクと回転数の配分を変えているだけなのです。

だから動力源を選ぶときは「必要トルク」単体ではなく、「必要トルク×そのときの回転数=必要出力」で考えます。トルクが足りないだけなら減速比で稼げます。しかし出力が足りなければ、動力源そのものを見直すしかありません。減速側の歯車の設計はモジュール・歯型・圧力角の役割分担で、回転数と共振の関係は共振設計の三つの視点で扱っています。

まとめ

  • 出力はトルクと回転数の掛け算。最高出力の回転数は、最大トルクの回転数より高くなる
  • NAエンジンはアクセル応答がリニア。ターボと比べ燃費・環境性能では不利
  • 出力型ターボは低回転トルクを犠牲にして高回転の出力を優先した設計
  • ダウンサイジングターボは小型化で失ったパワーを過給で補い、低回転からの扱いやすさと燃費を両立する
  • 減速機はトルクを増やせても出力は増やせない。動力源選びは必要出力で考える

関連記事

ABOUT ME
一松(いちまつ)
一松(いちまつ)
大学院(機械工学専攻)修了後、機械設計エンジニアとして設計一筋20年
大学院(機械工学専攻)修了後、製造業で機械設計に従事。20年以上、動力機器の設計開発に携わっています。現場の知見から「考えるための情報」を発信しています。
記事URLをコピーしました